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2019ベーシックコース 第6期 第5回

先日、台風19号で東日本を中心として甚大な被害が出ましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

この度、災害に遭われた地域・世帯の皆様に心よりお見舞い申し上げますと共に、一日も早い復旧をお祈りいたします。

さて、PHIJ2019ベーシックコースもいよいよ折り返し地点の第5回目を迎えました。

前回同様、天神クリスタルビルにて開催され、PHIJ Co-Directorである岸本先生に歯周再生治療と歯周病と全身疾患について講義していただきました。

再生治療のイントロとして、医科領域におけるiPS細胞に関連したトピックについて話されました。歯科の分野においてもiPS細胞を用いた再生療法が近いうちに実現するのではないか考えられます。しかし、今後新しい再生療法が実用化されたとしても、原理原則は変わりません。ですので、原理原則を学び、しっかりと知っておくことがより大切です。

では再生療法の原理原則とはどのようなものなのでしょうか。

講義では、①治療後の治癒形態、②骨の形態、③患者に関する因子、④歯に関する因子の4つのパートに分けて詳しく見ていきました。

歯周外科治療後の治癒過程は皮膚を怪我した時と大まかには似ていますが、決定的な違う点があります。それは、どの細胞が根面に付着するかによって、治癒の仕方が変わってくるということです。どのような場合に上皮性付着になりまた結合組織性付着になるのか、そして治癒形態が修復ではなく再生において足場、血液供給、細胞、シグナルの4つをキーファクターとして挙げ、非常にわかりやすく教えていただきました。

次に、骨の形態ですが骨璧の数によって再生能力は異なるのか、また骨璧だけでなく垂直性骨欠損の深さの程度、骨欠損部位の角度によっても違いはあるのか?また、歯に関する因子では、歯の動揺、歯肉の厚み、歯髄の状態の違いによって何がネガティブに働く要素になるのか?一つの軸となる基準を学ぶことができました。

そして、患者自身に関する因子ですが、良好なプラークコントロールと定期的なメインテナンスによる効果についての検討と、喫煙が再生療法に与える悪影響の要素を理解し、再生療法を行う上でのディシジョンメイキングを立てることができました。

では再生療法を行う際に、市場には数多くの材料が出回っている中で、どのように材料を選択すれば良いか、その材料の特徴も合わせて理解する必要があります。メンブレンや骨移植材、そして成長因子の理想的な物性や性質を把握した上で、さらにそれぞれの種類と選択方法を学び、臨床的効果を交えて判断していきます。かなり膨大で混乱しそうな内容も、筋道を立てて論理的に教えていただいたことで理解を深めることができたのではないのでしょうか。

最後に、分岐部病変の予後と診査に影響を与える因子を様々な角度から評価し、それに応じた治療のオプションを把握することができました。

岸本先生による講義の後は、中山先生と関先生により論文抄読 (Clinical concepts for regenerative therapy in intrabony defects:Cortellini P and Tonetti MS) を行いました。歯周組織再生療法に関して、再生材料や薬剤を使用した際の臨床効果と有効性のレビューを分析し、臨床効果にばらつきがあることを捉え、その観察された臨床的に差を生み出す要因を一つずつ紐解き、実際の外科手術の方法と選択基準をディシジョンツリーとしてまとめ評価していました。今回の岸本先生による講義内容にも通ずる膨大な情報量を翻訳及びスライドにまとめていただきました。先生方、大変お疲れ様でした!

2日目は岸本先生による歯周病と全身疾患に関する講義でした。

歯周病と全身疾患はどのように関連しているのか?

歯周炎のリスクファクター及び病因論を復習した上で、病因論に影響している全身疾患として、糖尿病、肥満、心血管疾患、骨粗鬆症、関節炎、喫煙、炎症性腸疾患、ストレス、服用薬剤を挙げられました。そして、これらが複雑に絡み合う歯周病を共存症と捉え、どのように患者にアプローチをしていけば良いのか、超高齢社会において増えていくであろう向き合うべき課題を丁寧に教えていただきました。

日本の保険医療を取り巻く環境が依然として多くの課題を抱えている中で、より良い医療環境を構築するために、2035年を目標に日本が世界をリードする存在となるよう課題を解決していこうというスローガンがあります。医療の環境が大きく変化していく中で、これまで以上に医科と双方向に連携をもって良好なコミュニケーションをとることが重要になってくるのではないのでしょうか。

その次のセッションでは、妊娠性歯肉炎に関して野間先生に講義していただきました。妊娠初期から後期になるに従い性ホルモンの分泌が大幅に増加し、炎症を生じやすい状態になります。妊娠性歯肉炎の原因はプラークであるため、機械的なデブライドメントによる歯周病原因細菌のコントロールが大切です。妊娠時、また産後にどのぐらいの炎症が生じ、影響が続くのか、Systematic reviewを通して分かりやすく教えていただきました。

午後は前回に引き続き豚の顎骨を用いて、切開、剥離、縫合及びエムドゲインを用いた再生療法の実習を行いました。少人数だからこそ、各受講医院の先生方と時間をかけて手技、技法の疑問を解決できたのではないでしょうか。築山先生が推奨する外科器具が入ったPHIJキットを用いて、講義だけでは見えてこない米国歯周病専門医の臨床のテクニックを学ぶ貴重な機会があるのもこのPHIJの一つの特徴でもあります。

さて、理解を深めてきましたが、今回も受講生から多くの質問をいただき、活発で有意義な質疑応答を2日間に渡り行うことができました。今後も講義だけではなく、有意義なディスカッションが出来るよう、スタッフ一同勤めてまいります。

再生治療の原理原則、そして今後メインテナンスで重要となってくる全身疾患と歯周病との関わりを勉強したい歯科医師だけではなく歯科衛生士とともに、今後も学びを深めて行きたいと思います。

受講医院の皆様、第5回大変お疲れ様でした!

PHIJ運営スタッフ一同

p.s
PHIJ懇親会も盛り上がっております。

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